forget-me-not 4 勿忘草
非恋草 西欧伝説
中世の騎士道華やかだったころ、ドイツにロドルフという若い騎士がいた。
ベルタという美しい乙女と相思の仲となり、両親にも許されて幸多い日が続いていた。
ある日、二人ほ手をとり合って、うららかな春の陽を浴びながら、若草を踏んでダ
ニュープ河畔をそぞろ歩いでいた。その時河畔に明るいコバルト色の、ひときわ可憐
な花が咲いていた。ベルタは思わず、「何んて優しい花でしょう」とため息をついた。
それを聞いてロドルフは、世の常の男のように身を乗り出して、それを摘み採ろうと
した。
だがその時ロドルフの体は、急にバランスを失って、満々と張る急流の中へ落ち込
んだ。彼は身をもがき懸命に岸へ泳ぎ着こうとしたのだが、水量の多い急流ではその
努力も空しく、驚いて駆けよるベルタに「forget me not」と一声叫んで、摘みとった
花を投げ与えた。渦巻く急流はそのまま、ロドルフを下流へと連れ去った。
この出来事を伝え聞いた人々は、いつかこの草に、「forget me not」の名を与えて呼
ぶことになった。
『英米故事伝説辞典』より
by toruphoto
| 2010-08-20 23:26
| 花・植物
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