雪の花 2
スノードロップ (待雪草) Galanthus nivalis
エデンの楽園を追われて、地上に降りたアダムとイヴは、今までのように遊んでばかりいられ
なかった。アダムは土を耕し、イヴは、衣を整えねばならなかった。それでもまだ暖かいうち
はよかったが、花が散り葉が落ちて、木枯らしが吹き荒れる冬が来ると、暖かかった常夏のエ
デンの園が無性に恋しくなると共に、地上のの暮らしがひときわ味気なくなってきました。
蛇の甘言の迷わされて、禁断の木のリンゴを食べた報いとはいえ、イヴに言わせるとこの世は
寒いばかりで、花ひとつ咲かないばかりか、木の実も稔らず、ほんとうに詰らないところである。
いくら、アダムが慰め、白い雪を指して「天国では見られなかった美しい銀世界ではないか」
と言っても、イヴの不平はいっこうに静まらなかった。果てはついにイヴはヒステリックに家
を飛び出して、いきなり雪の原へ駈け出して行った。アダムは驚いてすぐその後を追ったが、
荒れ狂う吹雪の中でその姿を見失って、その夜イヴはついに帰ってこなかった。
翌日きれいに晴れ渡って、白い雪が朝日にまばゆいばかりに輝いていた。イヴは家から少し離
れた所で雪に埋もれて、息絶え絶えで倒れていた。その時急に空から天使が舞い降りてきて、
イヴの耳元で囁いた。「こんな凍りつく様な寒い地上でも、結構美しい花が咲くものですよ」
そう言って天使が雪にそっと手を触れると、融けた雪の雫から、見るからに清純そのもののよ
うな、小さな純白の花が咲きました。これが、スノードロップが地上に咲いた始まりだという。
西欧伝説