虹とアイリス
ジャーマンアイリス Iris germanica
虹とアイリス
昔この世がまだ少しも汚れず、清らかだった頃、野山の花が集まり、花祭りを催した。この祭りには
この世の中にある、すべての花が参加した。どの花も今日を晴れの舞台と思い着飾り、装いを凝らして
遠近を問わず集まってきたので、百花繚乱というか言葉では言い表せないほど美しかった。
そんな中にただ一人、青い着物を着たひときわしょうしゃな少年がいたが、わけてもその冠とエメラルドの
玉飾りは美しくも気高くて、花たちはみなうっとりして人気はこの少年ひとりに集まった。しかし、誰ひとり
その名を知るものはいなかった。その時突然、大空に美しい虹が出て、山から山にかけられて野末を遠く
彩った。するとたちまち、七彩の虹が少年の青い服に映えて、ひとしお気高く輝いてきた。それを見て誰
いうともなく、花たちは少年のことを、「虹の使」と呼ぶことにした。言わずもがなこの少年こそ、アイリスの
花であった。 西欧伝説
by toruphoto
| 2012-05-18 20:26
| 花・植物