ナルキッソス その二
洋種ズイセン Narcissus
ナルキッソス物語
むかし、ギリシアのあるところに双生の妹をもったナルキッソスという美しい若者がいた。兄と妹
は瓜二つで、どちらも劣らず、優れたの美貌の持主であった。二人は大変仲がよく兄妹というよりは、
むしろ恋人同志かおしどり夫婦のようで、いつも影が形に添うようにして暮していた。ところがふと
した病がもとで、妹はとつぜん消えるようにして、世を去った。それからというものナルキッソス
は、あてもなくあちこちをさ迷い歩いて、悲しい日々を送っていた。
今日もまた彼の足は自然と、二人でよく遊びにきたことのある想い出もなつかしい緑の森に囲まれ
た物静かに碧水を湛えた池であった。彼は池の縁をそぞろ歩いていて、ふと水面を見ると、今は亡き
筈の妹がありありと、そこにいるではないか。ナルキッソスは思わず喜びの声をあげて、懐かしさの
余り手を差し述べたが、とたんにその姿ほ崩れ去って、手を引くと再び妹の姿が現われ出した。
いうまでもなくこれは、妹に瓜二つの自分の姿が水鏡となって、水面に映し出されたのであった。
だがそれと気づかないナルキッソスは、ここへ来て妹に逢うのが病みつきとなり、毎日この池のほと
りへ通って、見飽きることなく空しい映像を眺めて日を送っていた。神々はこの若者のいじらしい心根
を不憫に思って、若者がいつまでも、またいつでも妹に逢えるようナルキッソスを池のほとりに咲く
一輪の花スイセンにしてやったということである。(ギリシア神話)
by toruphoto
| 2013-04-11 20:15
| 花・植物