アネモネ
アネモネ Anemone coronaria
アネモネ Anemone coronaria
西風とアネモネ
緑の森に囲まれたポモースのひっそりした宮殿へ、ある時一人の乙女が連れてこられた。名をアネモネ
といい、花の女神フロラの侍女であった。その花をも欺くような美しさと若鮎にも似た初々しさほ、フロラの
夫西風の神ゼフィールスの情欲をさそって、神ほ女神の隙を見ては追いかけていた。
そこでフロラほ侍女アネモネを夫から遠ざけるためここへいわば隔離したのであった。
だがそんな事情は知らずアネモネは毎日、華かだった宮殿の生活に比べて、淋しい日々を悲しんでいた。
そんなある日、西風の神ゼフィールスがとつぜん現われて、何やかやと甘い言葉を娘にささやいていとも
優しく慰めた。そうされると今まで、無邪気で天真爛漫だった乙女も、淋しさに堪えかねていた矢先だけに
西風の神の心づくしが何か暖かい風に包まれた心地で、始めて乙女の胸に初恋の灯が点もされた。
一方フロラは夫の西風の神が、急にいなくなったのに気づいて、それをあやしみ、さてはと急いでアネモネ
のいるポモースの宮殿へかけつけた。果たして夫はアネモネに優しくかしずかれて、二人はいかにも睦ま
じげに過ごしていた。フロラは嫉妬のあまり、とたんにかっとなって、アネモネを口汚なく罵った。その上と
うとうアネモネをその名も同じアネモネの花にしてしまったという。 (ローマ神話)
by toruphoto
| 2013-04-20 20:42
| 花・植物