クノウ姫とモグラ
福寿草 Adonis amurensis
福寿草 Adonis amurensis
昔、蝦夷の国の天上の神にクノウという美しい姫君がおりました。
姫が年頃になったので、父神はすばらしい婿君を探そうと苦心しておりました。
地上のあらゆる神々を丹念に調べましたが、姫にふさわしい婿は見つかりません。
たまたま、地中に住む土竜の神を調べたところ、これぞ父神のメガネにかなった似合いの
婿であることがわかりました。そして、土竜の神も姫を妻にと望んだので、目出度く婚約が
成立しました。しかし、生まれつき明るい太陽が大好きなクノウ姫は、土竜の神との結婚が
嫌で嫌でたまりませんでした。でも、父神のいいつけです。逆らうことはできません。姫は
泣く泣く地上に降りて、華燭の典を挙げることになりました。
そして、結婚式の当日、天上天下あらゆる神々が集う宴の最中、クノウ姫の姿がかき消す
ように見えなくなってしまいました。一同が慌てふためいて探したところ、荒野の雑草の影
で泣いている姫が見つかりました。これを見た土竜の神は激怒し、「お前は、天の掟に背き、
父の御心に背いて、天上地上を騒がせた。二度と天上の雲の宮居に帰ることはできない。
一生地上の草となって暮らすがよい」といって、姫を激しく折檻しました。
クノウ姫はそのまま黄色い花をつけた福寿草となり、
陽が昇ると花を開き、はるか天上の故郷を仰ぐようになりました。
(アイヌの伝説)
by toruphoto
| 2015-02-21 20:58
| 花・植物